医師が勧める健康な身体創り

医学理論に基づく正しいダイエット法の紹介

その1 タンパク質について ここで少し話が難しくなりますが、臨床栄養学的なお話をしますので頑張ってついてきてください。摂食したタンパク質は消化管でアミノ酸に分解され腸管から吸収され肝臓で代謝されます(前述しましたが、合成の元となるアミノ酸の2/3以上は体内で分解され産出されたアミノ酸を利用します)タンパク質は全ての臓器や組織の構造基本体であり、いろんな働きをする実務的役割を果たしています。そして、その合成と分解のバランスは微妙です。絶え間なく代謝が行われているのですが、その活動や障害によって分解(崩壊)するタンパク質量は変化し、それを補うように絶えず合成が行われています(がんがん身体を動かして、身体を壊し、また新たに体を創るためにがんがんにタンパク質を取って高回転の代謝が行われている状態と言えるでしょう)またタンパク質合成の為にはそれに対して相応のエネルギーが必要です。簡単に言うと燃料がないといくら原材料があっても工場で製品が作れないということと一緒です。この指標の一つがNPC/N(非タンパクカロリー/窒素比)です。これは体内で健全にタンパク質が合成される状態のために摂取する窒素とエネルギーのバランスを示しています。安定な状態では150-200程度 外傷や高ストレス下では80-100程度、逆に腎不全の時は窒素の排泄が低下し、高Bun血症になるので200以上になります(簡単に言うと体が元気で普通な状態ではタンパク質の150-200倍の非タンパク質カロリーの栄養摂取が必要であり、その比率はストレスの状況で変わるということです)ですからアスリート目指して筋肉量を増やすためには、トレーニング前には身体を動かす分の糖質(ガソリン)を補給し、身体に負荷を掛けてガンガンに鍛えて、トレーニングの後は速やかにたんぱく質補給をする必要があります。またタンパク合成の為にも相応のエネルギーが必要なことを頭においておく必要があります。またタンパク合成の為には肝臓や筋肉を始めとして全身臓器、組織、細胞のコンディッションが重要です(高度の外傷や、侵襲の大きい術後などは体の中が異化亢進状態になっていて回復期にならないとタンパク質は合成されません。それゆえ高カロリー輸液をいくら投与しても負荷がかかるばかりで栄養状態は改善されません)それゆえどうしたら新しい身体づくりに適したコンディションについても更なる考察が必要となります

coffee break タンパク質の取り方について 前述しましたが成人のタンパク質摂取量は一日、50〜100gです。しかし意外に私達は良質なタンパク質を取れていません。ちなみに鳥の胸肉なら30%がタンパク質ですから、それから計算して200g〜400gの摂食が必要となります。またお魚もいいのですがそれほどは食べられないので、運動を良くする人はプロテインの補充もいいかもしれませんね。ちなみに腎臓、肝臓の機能がしっかりしている方は問題ないのですが、もし代謝、排泄機能に何か心配がある方は、私を含め良くわかっている医師にご相談ください。

タンパク質のお話 その2 タンパク質の代謝1

以前からお話しているように自分達の身体はタンパク質で形作られ、またそのタンパク質は私達の身体の中で様々な機能を果たしています。私達は日々、タンパク質を体内に取り入れ、また不要なタンパク質は分解代謝され、そしてまた新しくタンパク質が合成され、ほぼ一定な状態(恒常性)を保っています。

私達の身体の中では体内にあるタンパク質を分解したアミノ酸の多くを再度利用しています(エコシステムです)

また代謝されたタンパク質は尿素サイクルで分解され、尿として排泄されます。(この一つの例が高齢者で栄養状態がすぐれない方の栄養サポートをする時に伺われています。高齢者の方に過剰に過度なタンパク質を投与すると、腎機能が良くない方の場合、著明に血中の尿素窒素値が上昇します。これは投与したたんぱく質アミノ酸が活用されずに、代謝も悪く、尿としての尿素排泄機能が低下しているた体内に滞ってしまうのです) このようなことから見ても、私たちは全身の臓器機能の状態に合わせ、栄養の取り方を考える必要があるのです。

またアスリートや身体をよく使う人はそれだけタンパク質の補給になります。私達の活動に合わせたタンパク質の投与量を考える必要がありますね!

coffee break 症例提示 以前私が働いていた病院の透析室でタンパク質摂取に関して検討を要するケースがありました。70代の男性で排尿障害から腎後性腎不全になり、バルーンカテーテルを挿入し、尿が出始めたのですがデータが不良Bun(尿素窒素)やクレアチニンが下がらないため血液浄化を導入し、定期的に透析をされている患者さんがいました。しかしこの患者さんに関して私が見たときにはかなり尿量もアップされていて透析をされているためDataもある程度改善されていました。その患者の栄養指導に関して議論があったのですが、患者さん自身、そういう病状のため長期にわたる診療で、食事も適正に取れず筋肉が落ちやせ細っている状態でした。その時、周りの意見から腎臓がまだよくないのだからタンパク質はあまりとらないほうがいいのでは?という意見がありましたが、私は違いました。この場合、慢性腎炎などの糸球体病変ではないし、もともとの原因が腎後性腎不全であり、もう定期的に透析を回しているのだから、窒素バランスを考えてもやはりタンパク質補給が必要だと思ったのです。病気になって食事がとれず、筋力が低下しているのだから、運動をしてある程度タンパク質を補給して体を取り戻す必要があると考えました。しかしその時に考えたことは、意外に臨床の医療の現場でも、皆専門的な立場で考えていてもトータルで栄養学のことはあまり知らないのではということでした。その患者さんの栄養状態は病状、各種臓器機能Etc いろんな状況下で、刻々と変わります。またその時の状態に応じた栄養サポートが必要になります。そこで常に身体を知り栄養を知った上で、きめ細やかに指示を出すことが大事だと改めて思いました

タンパク質のお話 その4 タンパク質の素 アミノ酸

タンパク質はアミノ酸から生合成されます。アミノ酸はアミノ基を持つ12種類の有機物質で、人体の中で合成不可な必須アミノ酸と非必須アミノ酸に分類されます。実はいろんな栄養素(コレステロールなど)と同じように私達の身体は、体内にあるアミノ酸を再利用しています。私達は日々平均200gのタンパク質を新しく合成していると言われていますが、その原料の2/3以上は体内にあるタンパク質を分解して生じたアミノ酸を原料にしています。

これは私達生物が飢餓になった時に備えて、既に身体に蓄えた栄養素を再利用する能力を兼ね備えているのです。

通常私達は1日に体重1kg当たり1gのタンパク質の摂取が必要と言われています。私達が新しい身体を作るためにもいいタンパク質の摂取を心がけましょう

タンパク質のお話 その3 タンパク質のインアウトバランス

前回お話ししましたが自分たちの体の中には多種多様なタンパク質がたくさんあって、いろんな機能を果たしながら、分解され、代謝を受け、また新しく合成され常に入れ替わっています。今回はそのインアウトの概要についてご紹介しましょう。

私たちの身体の15%程度がタンパク質から構成されています。即ち70㎏の成人なら体の10㎏近くがタンパク質からできています。タンパク質の種類によって代謝される速度は違いますが、平均で毎日体重の3%程度200~300gが入れ替わっていると言われています。またタンパク質の必要摂取量は1日体重当たり1g/体重㎏程度であり、70㎏の成人なら一日の必要摂取量は70gになります。またそれと同じ量のタンパク質が分解され体外に排出されてバランスが保たれています。

これからの講義の予定についてお知らせします。まず総論として基礎栄養学(栄養の知識や栄養素の体内動態)をわかりやすく紹介します。次に実践編として、栄養を軸においた食事の取り方について役に立つ実践的な講義をしていきます。そして、今はまだ検討中ですが、その中には1)健康的なダイエット方法や2)アスリートの身体を創る食事法や3)Anti agingや若返りの食事 など、いろんな個別のケースに関してもお話を広げていきたいと考えています。また将来的には今後、実際の病気(代謝障害、肝機能障害、腎機能障害、悪性腫瘍など)に対する食事療法(栄養の注意点)も展開していきますので皆さん頑張って追て来てください。一緒に、私たちを、そして私たちの人生を変えて行きましょう。追伸)各講義で皆さんの質問やリクエストに応えていきますのでどんどん書き込みしてきてください。